神生み 7:虐殺された火の神 後編
さらに刀の柄に溜まった血が、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)の指の間から溢れ出てきました。
その血から出現した神が、渓谷の水を司る竜神闇淤加美神(くらおみのかみ)と渓谷から流れ出る水の神闇御津羽神(くらみつはのかみ)です。
火と水は対比する関係としてやはり縁深く、だからこそ火の神から水の神が誕生しているのでしょう。
日本の神々はこのようにして、関連性の高い相対するものが出現することがあります。
殺された迦具土神(かぐつち)の亡骸からも、次々と山に関わる8柱の神様が出現します。
頭:正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)
山の神です。
胸:淤縢山津見神(おどやまつみのかみ)
正鹿山津見神の弟格にあたる山の神です。
腹:奧山津見神(おくやまつみのかみ)
山奥の神です。
陰部:闇山津見神(くらやまつみのかみ)1
渓谷の神です。
左手:志芸山津見神(しざきやまつみのかみ)
茂った山の神です。
右手:羽山津見神(はやまつみのかみ)
山の麓の神です。
左足:原山津見神(はらやまつみのかみ)
山裾の野原の神です。
右足:戸山津見神(とやまつみのかみ)
里近くの山の入り口の神です。
火の神の亡骸から山に関わる神様が出現したのは、日本が火山国であることと関係性があると思われます。
噴火のメカニズムなど知らない古代の人々にとって、火を噴いて爆発する山の姿に度肝を抜かれたことでしょう。
噴火した山から流れ出る火砕流のすさまじさに、火の神と山の神を強く結びつけることになったのではないでしょうか。
山に住まう神へ畏れが、同時に火の神への篤い信仰心を生みだしたのではないかと思われます。
日本の神様はこのような自然が神格化した神様だけではなく、剣なども神様となります。
迦具土神を斬った十拳剣は、天之尾羽張(あめのおはばり)という名のついた神様です。
これは、天上界の雄々しい大きな刀であることを意味します。
別名を伊都之尾羽張(いつのおはばり)といいます。
これは、威勢のあって雄々しい刀であることを意味します。
出雲の国譲りの章で、国譲りの交渉人として候補にあがった神様です。
しかし他の大事な任務中だったので、刀の手元についた血から出現した建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)が交渉人として出向くことになります
伊邪那美神(いざなみのかみ)が命を落としたことで、伊邪那岐神(いざなきのかみ)と伊邪那美神(いざなみのかみ)の2柱による「神生み」は出来なくなってしまいます。
そのため、この後も神様は出現しますが、2柱による「神生み」はここで終了となります。
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