神生み 3:火の神の誕生、そして伊邪那美命の死

伊邪那美命(いざなみのかみ)は火の神、火之夜芸速男神(ひのやぎはやおのかみ)を生みます。
この神は別名が2つあって、火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)と火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)です。

火之夜芸速男神は、火の勢いが盛んな様を表した名前です。
火之炫毘古神は、火が明るく輝く様を表した名前です。
火之迦具土神は、火がちらちらと燃える様を表した名前です。

異なる火の状態で、それぞれ名前が分かれているのです。

火の神を生んだことで、伊邪那美命は陰部に深刻な火傷を負ってしまい、病気になってしまいます。

病気に苦しむ伊邪那美命の排泄物から、様々な神が出現しました。

まず、嘔吐から鉱山の神が出現しました。
金山毘古神(かなやまびこのかみ)と金山毘売神(かなやまびめのかみ)です。

続いて、糞から粘土質な土の神が出現しました。
波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ)と波邇夜須毘売神(はにやすびめのかみ)です。

さらに尿から、彌都波能売神(みつはのめのかみ)と和久産巣日神(わくむすひのかみ)が出現しました。
彌都波能売神は灌漑用の水の神で、和久産巣日神は若々しい生命力の神です。

この和久産巣日神の子が、豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)です。
豊宇気毘売神は、穀物の女神です。

火の神はいわば火山であり、火山によって刺激された土壌で鉱物が生まれます。
また火山の刺激は、栄養分を沢山含んだ土も生み出します。
そこに水が引かれることで、作物が育つ土が出来上がります。

栄養分をたっぷり含み、水の恵みに満ちた豊かな土に、若々しい生命力が宿ることで作物は育ちます。
そんな風にして金山毘古神から和久産巣日神までの誕生があって、穀物の女神が生まれます。
必要な段階を踏んで、生まれるべくして生まれた神様なのです。

この豊宇気毘売神は伊勢神宮の外宮に祀られている神で、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の食事係を担当している神です。
豊宇気毘売神の御神力により豊穣はもたらされ、私たちは毎日美味しいご飯が食べられるのです。

ここまで沢山の神々を生んできた伊邪那美神ですが、火の神を生んだことで負った火傷で、遂に命を落としてしまいます。

伊邪那美神を亡くした伊邪那岐神(いざなきのかみ)は、大変嘆き悲しみました。
「愛しい妻の命が、1柱の子供に代わるものか!」
と言って、伊邪那美神の枕元や足元に腹ばいになって涙に暮れたのです。

その涙から香具山(かぐやま)の畝尾尾(うねびお)の木本(このもと)にいる、泣沢女神(なきさわめのかみ)が出現しました。
奈良県橿原市木之本町に、今もこの神を御祭神として祀る泣沢神社があります。

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