黄泉国で夫婦喧嘩 2:暗闇に浮かび上がったのは

闇の中に浮かび上がった伊邪那美神(いざなみのかみ)の姿。

体中蛆にたかられ、のどがむせぶような音を立てていました。
さらに頭に大雷、胸に火雷、腹に黒雷、陰部に折雷、左手に若雷、右手に土雷、左足に鳴雷、右足に伏雷、と8柱の雷神を従わせていました。
「雷」とは、恐ろしい魔物という意味です。

伊邪那美神は頭に成熟した魔物、旨に火を灯している魔物、お腹に黒い魔物、陰部に裂く力を強い魔物、左手に若い魔物、右手には醜い魔物、左足には音が鳴る魔物、右足には這いつくばっている魔物を抱いていたのです。

そんな風に黄泉の国の住人らしい、凄まじく醜悪な姿になってしまっていたのです。
愛しい姿を想像していた伊邪那岐神(いざなぎのかみ)は、あまりの恐ろしい変貌ぶりにびっくり仰天。
伊邪那美神の姿を見るな否や、思わず逃げ出してしまいます。

自分の妻の姿にびっくりして逃げ帰ろうとする伊邪那岐神の心情は分かるものの、やっぱり顔見て逃げ出すのは失礼な話です。
しかも伊邪那美神は戻りたいと思って黄泉神に相談してきたわけですから、そういう想いも台無しにされたこともあり、
「私に恥をかかせましたね!」
と大層腹を立たのも無理からぬことです。

しかし伊邪那美神は神様だけあって、怒りのスケールがけた違いです。
すぐに母都志許売(よもつしこめ)という、大層醜い黄泉の女を追い遣わします。

つかまったら大変。
八つ裂きにされて殺されてしまうかもしれません。
伊邪那岐神は逃げる足を速めます。

ここから、壮大な逃走劇が始まります。

伊邪那岐神は走りながら頭につけていた髪飾りをとって、投げ棄てました。
すると飾りはたちまち葡萄の木になって、実をたわわに実らせます。

母都志許売は追撃の足を止めて、美味しそうな葡萄の実に食らいつきます。
その隙に、伊邪那岐神は逃げます。

しかしあっという間に葡萄を食べ終えてしまい、再び追いかけてきます。

伊邪那岐神は、今度は右側に結った髪に刺してあった湯津津間櫛(ゆつつまぐし)を引き抜いて投げ棄てます。
すると、今度は筍が沢山生えてきました。

母都志許売は同じように足を止めて、美味しそうな筍に食らいつきます。
その隙に、伊邪那岐神はさらに足を速めて逃げます。

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